「ウ゛ェイグ、あっちに面白いものが売っていたわ!」
「ウ゛ェイグ、大丈夫…?どこも怪我してない?」
「ウ゛ェイグ!!」
近くて遠い
変わらない。
姿は変わっても、クレアは何も変わっていない。
最初はそれが嬉しかった。
クレアはクレアなのだと、感じることが出来たから。
…けれど
自分は、クレアとアガーテが入れ替わっていることに、全く気付かなかった。
確かに違和感を感じることはしばしばあった。
けれど、それを気のせいだと思っていた。
姿だけで判断していたのだ。
「ウ゛ェイグ…?」
「―!」
背後から突然声をかけられ少し体がこわばった。
「クレア…」
「どうしたのウ゛ェイグ?ボーっとしちゃって。」
「いや…何でもない。ちょっとあの家を見てただけだ。」
「…ふふ、変なウ゛ェイグ!」
クレアだ。
仕草も、話し方も、考え方も。
そう、クレアなのだ。
―なのに拭えない違和感。
顔が、声が、姿が
クレアとは違うから。
「…………………」
あれはクレアだ。
頭でそう考えても、心は中々受け入れてくれない。
どうしても一つの疑問が浮かぶ。
―あれは、本当にクレアなのか?
頭と心の矛盾。
幸い誰にも気付かれていない。
考えるな。
受け入れろ。
「…………………」
最近、ウ゛ェイグの様子がおかしい。
私と話していると、一緒にいると、戸惑った表情をよく見せる。
初めは分からなかった。
その理由が。
けれど、時が経つにつれ、段々分かってきた。
原因は、私の体だ。
女王陛下の体。
―ガジュマの、体。
確かに、自分にも戸惑いはあった。
目が覚めたら知らない場所で、別のヒトの体になっていたのだから。
それでも今、不安がないのは、ウ゛ェイグが側にいてくれるからだ。
小さな頃からずっと一緒で、姉弟同然なのだから。
―もっとも自分は、それとは別の感情も抱いているが。
ウ゛ェイグがいてくれるお陰で、自分の心は随分落ち着いた。
だから、自分もウ゛ェイグの支えになりたい、ついていきたいと思った。
この不安は何なのだろう。
例えようのない、不特定な不安。
怖いのだ。
彼女がクレアではなかったら、自分は心を保てなくなる。
彼がいつか自分の手を振り払うのではないかと思うと。
どうすればいい?
どうしたらいい?
この不安を取り除くためには。
「ウ゛ェイグ…」
今日、ウ゛ェイグのフォルスが暴走した。
私がいるから?
私が、クレアの「体」じゃないから?
だから、あなたは苦しむの?
それなら、私は消えてしまおう。
これ以上、貴方が苦しむ姿は見たくないから。
だから―
「さよなら、ウ゛ェイグ…」
「今のお前の隣に彼女の居場所はあるか?」
ミルハウストの言葉が頭から離れない。
結局俺は、自分のことしか考えていなかったんだ。
自分の考えをクレアに押し付けて。
一番辛い立場のクレアを、さらに傷付けてしまったんだ。
「何でも言ってくれよ?一緒に悩ませてくれよ?俺たちは仲間だろ…?」
俺には仲間が、…大切な人が、何時でも側に居てくれたのに…
後悔が心を漂う。
けれど、後悔してばかりではいられない。
大事なことを身をもって教えてくれたティトレイ、自らが作り出した過ちを償い、自分の気持ちに向き合ったアガーテ。
ベルサスでのクレアの話を、思い出し実感できたスールズ。
答えは、皆が教えてくれた。
だから、もう迷わない。
今なら、お前を迎えに行ける。
待っていてくれ、クレア―
end.