あれは、誰?












ここは、何処?











・・・・・俺は、誰?
















「・・・駄目だ、思い出せない・・・・。」

あれからさらに数日、一向に戻らないスタンの記憶のせいで足止めを食っていたが、
ルーティがとうとう痺れを切らし、不安を残しつつも、出発したのだった。

一番心配だったのは戦闘についてだったが、記憶がなくても体は覚えているらしい。
連携もいつも通りで、特に差し支えはなかった。

とはいっても、目的ある旅の途中。
やはり何も覚えていないのは不安で、

「・・・・・なんとなく、なんとなくは分かるのに、何で―」

誰に問いたわけでもなく発せられる言葉。

「・・・・何をぶつぶつと言っている。」
「!?」

急に話しかけられ驚く。

「リオン・・・・。」

そこには、自分よりいくつか年下の、けれど大人びて見える少年の姿があった。

「いつまで起きている気だ?ただでさえお前は朝起きれないんだ。さっさと寝ろ。」


厳しい一言。それには少し、苛立ちが含まれている気がした。



「うん・・・・。」



リオンは、自分のことが嫌いなのだろうか、といつも思っていた。
必要以上のことはあまり話さないし、何よりさっきのように苛立っていることが多いからだ。
元から自分と仲が悪かったのか、記憶がなくなったことに怒りを感じているのか。
それなら、 あまり近づかないほうがいいのだろうか、とも考えたのだが、
なんとなく、傍にいたい、と思ってしまう。




この気持ちはなんなのだろうか。
考えれば考えるほど分からない。




「あ、あのさ、リオン・・・。」
スタンは恐る恐る、リオンに話しかける。
「その、記憶が無くなる前の俺って、どんな奴だった?」





「・・・・・・・そうだな。」





リオンは椅子に腰掛け、少し考えた後、こう答えた。



「お前はとにかく、お人よしの大馬鹿だった。」

「・・・いきなりそんなこと言う?普通。」

「本当のことを言ったまでだ。」

「・・・・あっそ。他には?」

「いくらでもあるさ。剣の腕に反比例して頭が悪い。
いつもぼけっとしていて他の奴らにばかにされている。
寝起きの悪さも天下一品だな。」


さすがにここまでいわれたら、悲しくなってくる。


(・・・なんか今、記憶喪失のままでいいやとか思っちゃった・・・。)


「だが・・・・・。」


そこで、リオンの口が止まる。


「?」


立ち上がり、ゆっくり、こちらに近づいてくる。





「お前は、いつも笑っていた。」





目は、真っ直ぐこちらを向いている。





「いつでも、僕に笑いかけてくれた。」




だんだん、お互いの距離が縮まっていく。




「僕は・・・・・。」




とうとうスタンの目の前に。




「僕は・・・そんなお前が・・・・」




突然、ぎゅっと抱きしめられる。



「り、リオン?」



「何故・・・何故忘れてしまった・・・・・・?」



それはとても、悲痛な声。



「スタン・・・・・・!」





知っている。自分は、知っているはずだ。




彼の声も、目も、思いも。





知っている―





「っつ・・・!」



突然、頭痛に襲われる。


「スタン?」
「あ・・・・頭、痛い・・・・・・」
気を抜くと気絶してしまいそうだった。
「い・・・・た・・・・・・」
あまりの痛さに、身がよろける。
が、悲しいかな、自分より長身のスタンを、リオンは支えることが出来なかった。
そのまま後ろに倒れこんでしまった。




ドカッ




後頭部を思い切り、椅子にぶつける。
「おい、スタン!スタン・・・・・・!!」
意識が無くなる寸前、自分を呼ぶ声が聞こえた。




















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